椿の花咲く頃
平凡な田舎町オンサンに美しいシングル・マザーのオ・ドンベクが越してきた。商店が並ぶ通りで飲み屋を開き一人息子を育てる。たちまち店は繁盛するが、店に通ってくる常連客の妻たちから反感を買う。一方、この物語の中心人物のファン・ヨンシクは、トラブルを見かけると放っておけず、犯人逮捕に何度も貢献していた。その手腕を認められ、警察官になる。ソウルに配属になるが、犯人をTVカメラが中継するなか殴ってしまったため、地方の警察署に左遷される。そこは、ヨンシクの故郷だった。ヨンシクは、ドンベクに会うなり一目惚れする。何かにつけドンベクを助けるが、ドンベクは心を閉ざしたままヨンシクを突き離す。ドンベクに心を寄せる既婚者の大家は、ドンベクの関心を引くため、店の壁の落書きを今日中に原状回復しろと無理を言う。居合わせたヨンシクが、ペンキ塗りを買って出ると、妙な落書きを見つける。6年前に連続殺人を犯したとされる通称ジョーカーと同じ言葉だった。5年間動きがなかったジョーカーが、現れたのではないかと、ヨンシクは警戒する。そんな折、ドンベクが7歳の時に別れた認知症の母親が、警察に保護される。母親との交流、ヨンシクの母親との摩擦からドンベクは子供を思う母親の強さを学んでいく。常にオドオドし、自信が無く、泣き虫なドンベクが、ヨンシクの愛を受け世間の偏見と闘いながら、変わっていく様が描かれている。連続殺人事件に焦点が当てられるのは、最終話に近づいてからだ。それまでは、犯人からのメッセージや痕跡のみ。中間で一度、殺人事件が起こりジョーカーの仕業ではないかと疑われたが証拠はなかった。
1話からドンベクを影から覗く怪しい場面が、挿入されている。何か事件が起きそうな予感をさせる。回想シーンや、毎回番組の末尾に流れる死体発見のシーンが突然流れ、時系列がバラバラなので、苦手な人は複雑に感じるかもしれません。常に事件を匂わせるシーンが挿入されているものの、全体的な物語は田舎町オンサンに暮らす平凡な人達の物語だったり、血のつながり、家族、母親などを描いた物語です。人それぞれ人生には苦しいことがあるが、助け合い生きている。人は誰かの奇跡になれるか。という最終話のメッセージがこのドラマの表現したかったテーマのようだ。盛りだくさんの内容だったため、飽きなくて良かったと言う見方もできるが、連続殺人事件は終盤に引っ張り過ぎで、このドラマには必要なかったように思う。イッキ観には向かない作品です。韓国では高視聴率を記録し、作家への評価が高かった。「百想芸術大賞(ペクサン大賞)」、「ソウルドラマアワード」でいずれも脚本賞を獲得している事から、シナリオの素晴らしさが評価された。